夢を見た
それまで僕は
不可抗力で死んでしまうのならそれも構わない
と思っていた
この世界で前を向いて生きる強さなんかなくて
自分で自分を殺す勇気もない
だから、事故だとか抵抗できない力で強制的に死に伏せるのなら
それを受け入れられると思っていた
だけど違った
夢を見た
目の前には自分のよく知っている人
楽しそうに包丁でリズムを刻んでいる
なんとなく、僕は声をかけた
するとその人は微笑みながらこちらを向くと
手にした包丁で僕の首を、肩から刺した
血は出ない
そう思っていた
倒れる自分
なおも微笑み続けるその人
自分がさっき立っていたところには赤い水溜り
死ぬんだと分かった
殺されるんだと分かった
「助けを呼ばなければ」
反射的に起き上がろうとする体
そこにトドメを刺すがごとく重ねられる追撃
次の瞬間
僕はベッドの上で汗をかきながら倒れていた
しばらく目を閉じることができず
かと言ってつけっぱなしの蛍光灯は明るすぎて
手は軽く震えていた
僕は怖がりだ
生きる勇気もなければ 自分で死ぬ勇気もない
夢の中で生きようとした自分が不思議ですらあった
目の前に、自分を指した人間がいる
そう分かっていても
逃げ切れるわけがないと思っていても逃げようとした自分
生きようとした自分
僕はたしかに
不可抗力で命を落とすのならそれもアリだと思っていた
むしろ殺してほしいとさえ思うときもあった
それからあの夢を見て気づいた
僕は生きたかったんだ。誰よりも。
- 2006/09/10(日) 12:06:25|
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